生態系サービス評価/Ecosystems Services Review
「企業のための生態系サービス評価 (PDF, 9.7 Mb, 48 pages)(ESR)」は、自社の生態系への依存と影響によるビジネスリスクとチャンスを管理するための戦略を、積極的に立案することを支援する体系的な方法論により構成されています。
企業は淡水、木材、遺伝子資源、花粉媒介、気候の調節、自然災害からの防護など、健全な生態系が提供するサービスに依存しており、これらの衰退・枯渇により、新しいビジネスチャンスを作ることができるだけでなく、企業の在続に関わる多くのリスクにも直面します。
残念ながら企業では生態系の健全性と事業の利益との関連づけがあまりできていません。
ESRは既存の環境マネジメントシステムや企業が既に採用している環境デューデリジェンスのツールを以下の6要素を含めて補完し補強しようとしています:
- 汚染、天然資源消費問題の先見性
- 自然環境の依存とそれに伴う影響への対処
- ビジネスチャンスと、リスクの考慮
- 経済と環境問題の結合
- ステークホルダー関与のための枠組み提供
- より革新的な企業戦略のための環境リスクとチャンスの効用化
ESRを適用した企業は、以下のようなさまざまなビジネス上の利点を得られることがわかりました。
- 企業の生態系および生態系サービスへの依存と影響から生じる新たなビジネスリスクとチャンスの特定
- すでに経営層により特定されていたリスクやチャンスに対する付加的な緊急性の発見
- 生態系の劣化に伴い出現する新たな市場を予測し、政府の政策に影響を与える
- 環境マネジメントなどの既存の手法の強化―従来のプロセスやツールが対応していなかった環境とビジネスに関する複数の問題を評価することで補完します
- ステークホルダーとの関係改善―企業が直面する数多くの天然資源の問題は、ステークホルダー(地域社会、先住民、他の産業部門、NGO)が同一の生態系から派生する異なる生態系サービスに価値を置くことと関係しています。
- 生態系サービスの劣化に対して積極的に取り組むことでの、企業の持続可能性におけるリーダーシップの発揮
企業のためのESRにより支援できる事業上の意思決定プロセス
- 企業、事業体または市場に関する戦略の立案
- 鉱山、油井・ガス井、パイプライン、農園、製造施設等の 企業のインフラ・プロジェクトの計画プロセス
- 新たな市場、製品またはサービスの特定
- 企業が保有する土地からの新たな収入源の特定
- プロジェクトまたは企業への投資
- 政策立案者を巻き込む戦略
- 環境影響評価
- 環境報告
例:
- モンディ: ヨーロッパ最大のクラフト紙およびオフィス用紙メーカーは、森林管理協議会(FSC:Forest Stewardship Council) が認証した南アフリカのプランテーションでの生態系サービスのチャレンジ対処のためいくつかの新しい企業戦略を開発するためにESRを使用しました。モンディは、侵略種をより徹底的に駆除すること、樹木種を土地の状況により適したものにすること、利用可能になり次第に水利用効率の高い品種を使用することおよび規定に従った草地の野焼きをより頻繁に行うことなど、水利用効率を向上するための一連の手法を実行することで、淡水不足が深刻になっていくことに伴うリスクを軽減することができます。
- シンジェンタ:農業市場で著しい成長をしている地域の1つである南インドの農家を、実地検証の範囲として焦点を当てました。ESRは、生態系の劣化により顧客が直面するリスクを同社が特定することに役立ち、一方で、これらのリスクに対応または軽減するような新しい製品とサービスという形の同社のチャンスを特定することにも役立ちました。例には、同社の他地域での経験(例:英国でのマルハナバチ作戦)に基づく天然の混合種子の販売、ハチの販売、あるいは広範なサービスでの支援などを通じて花粉媒介者を増やすための率先した主導;改良された、統合的害虫・雑草管理システムを農家に提供するため、同社の植物に関する非常に詳細な知識の駆使;地域の農業にとって重大な生態系サービスの状況と傾向に関する情報の不足分を埋めるため、同社の財団や社外の研究機関を巻き込む
- オーストラリアの観光業界は、グレートバリアリーフが供給するレクリエーションおよびエコツーリズムのサービスからの恵みを受けています。その産業を将来まで持続させることができる生態系の能力を保護し向上させる方法として、2003年、観光業界団体はオーストラリア政府にリーフ内の海洋保護区のネットワークを拡大するよう約束させました。団体の努力は、期待どおりの成果をあげました。2004年、政府は新たな区分計画を実施し、商用の漁業および娯楽の釣りが禁止されている「グリーンゾーン」を、リーフ内の5%から約33%にまで拡大させました。
- 多様なサービスを供給する生態系の能力を維持できるような方法で育てられ採取されたことが認証された木材製品、海産食品およびその他の商品の市場は成長し続けています。たとえば、森林管理協議会(FSC:Forest Stewardship Council) が認証した木材および紙の世界市場は2006年には50億ドルを超え、3年間で67%成長しました。海洋管理協議会(MSC) が認証した海産物の市場も、同様に成長しています。2007年3月31日までの1年間ではMSCのラベルが貼られた海産物の世界全体の小売額は、5億900万ドルで、前年度の2倍以上になりました
ガイドラインと関連ドキュメントのダウンロードは「企業のための生態系サービス評価(ESR)」ツールページを参照してださい。
「生態系サービス評価(ESR)」:ツール
ESRを実施するツール:
企業のための生態系サービス評価 (PDF, 9.7 Mb, 48 pages) は、企業の生態系および生態系サービスへの依存と影響から生じる新たなビジネスリスクとチャンスを管理するための戦略を開発するためのガイドラインです
依存度・影響度評価ツール (Excel, 417 Kb) は、最もビジネスリスクまたはチャンスのソースになりそうな生態系サービスを特定するために一連の問題を通じて経営者をガイドする表計算。
これ以外のツールにつきましては英語版サイトを参照してください。
WRIは、日本語版ウェブサイト製作へのサポート・翻訳を山崎晃生氏 (WRI) に感謝します。